「3時間眠れたから大丈夫」とは限らない。短い睡眠が続いたときに起こること
1日3時間睡眠を続けたら、体と脳はどうなる?
「3時間眠れたから大丈夫」とは限らない。
短い睡眠が続いたときに、脳と体に起こること
【この記事の要約】
- ・成人に必要な睡眠時間には個人差がありますが、厚生労働省は6時間以上を目安に、十分な睡眠時間を確保することを勧めています。
- ・眠る機会を1日3時間に制限した実験では、7日間にわたって反応速度が低下し、注意が途切れる回数が増えていきました。
- ・短い睡眠では、睡眠後半に増えるレム睡眠を十分に取れない可能性があります。
- ・睡眠不足が続くと、集中力だけでなく、血糖を調節する働きや食欲、ストレス反応に関係するホルモンにも影響する可能性があります。
- ・休日に長く眠っても、蓄積した睡眠不足の影響が、すぐにすべて元へ戻るとは限りません。

「昨日は3時間しか眠れなかった」
仕事が忙しかった。考え事をしていた。夜中に何度も目が覚めた。気がついたら、もう朝だった。
そんな日は、誰にでもあるかもしれません。
一晩くらいなら、コーヒーを片手に、気合いでなんとか乗り切ったように感じることもあります。
けれど、いつも通りに動けているつもりでも、注意力や判断力には影響が出ているかもしれません。
では、3時間睡眠が毎日続いたら、体と脳はどうなるのでしょうか。
「短い睡眠にも、そのうち慣れる」「3時間でも深く眠れれば大丈夫」
そう思いたくなりますが、本人が感じている以上に、注意力や反応速度は低下している可能性があります。
今回は、眠ることのできる時間を1日3時間に制限した実験をもとに、短い睡眠が続いたときの脳と体の変化、睡眠段階、ホルモン、回復睡眠についてお届けします。
1.1日だけの3時間睡眠と、毎日続く3時間睡眠は違う

一晩だけ睡眠時間が短くなった場合と、短い睡眠が何日も続く場合とでは、脳と体への影響は同じではありません。
一晩の睡眠不足でも、眠気、集中力の低下、反応の遅れなどが起こることがあります。
しかし、より注意したいのは、それが毎日続くことです。
睡眠時間が足りない状態が続いても、不足分はなかったことにはなりません。睡眠不足による影響が少しずつ蓄積し、仕事や家事での判断、車の運転、感情の安定などにも関わってきます。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人の適切な睡眠時間には個人差があるとしたうえで、6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保することを勧めています。
3時間睡眠は、この目安の半分です。
「3時間眠れたから大丈夫」というより、脳と体に必要な睡眠を十分に取れない状態が続いている可能性を考える必要があります。
まったく眠らない「断眠」と、短い睡眠を毎日続ける「慢性的な睡眠不足」は同じではありません。断眠については、以前のコラムで紹介しています。
関連記事:
眠らないと、ひとはどうなる?/断眠実験
2.「3時間・5時間・7時間・9時間」に分けた睡眠実験

2003年、Belenkyらは、健康な成人を対象に、睡眠時間と日中の能力の関係を調べました。
参加者は、ベッドで眠ることのできる時間によって、次の4つのグループに分けられました。
- ・1日3時間
- ・1日5時間
- ・1日7時間
- ・1日9時間
この状態を7日間続けたあと、3日間は1日8時間の睡眠機会が設けられました。
ここで注意したいのは、この研究で示されているのは「実際に全員がその時間だけ眠った」ということではなく、「ベッドで眠ることのできる時間を制限した」という点です。
実験では、画面に現れる刺激に反応する検査を使い、反応速度や、注意が途切れた回数などを調べました。
その結果、3時間群では、7日間にわたって反応速度が低下し、反応が大きく遅れる回数も増えていきました。
大切なのは、短い睡眠の影響が初日だけで終わらなかったことです。睡眠を制限した日数が増えるにつれて、日中の能力低下も積み重なっていきました。
1日だけ試して「意外と平気」と感じても、それが数日続いたときにどうなるかは、また別の話なのです。
3.3時間睡眠を続けると、脳の反応はどう変わる?

では、この実験で確認された変化は、日常生活ではどのように現れるのでしょうか。
睡眠不足というと、まず「眠い」「だるい」という感覚を思い浮かべます。しかし、本当に注意したいのは、自分では気づきにくい能力の低下です。
3時間の睡眠機会を続けた実験では、特に次の変化が確認されました。
- ・反応速度が遅くなる
- ・注意が一瞬途切れる回数が増える
- ・集中力を保ちにくくなる
- ・日を追うごとに能力の低下が積み重なる
いつもならしない入力ミスが増える。人の話が頭に入ってこない。買い物に来たのに、何を買うつもりだったか思い出せない。信号が変わったことへの反応が一瞬遅れる。
こうした小さな変化は、「疲れているだけ」「今日はぼんやりしているだけ」と見過ごされやすいものです。
睡眠不足が続くと、「これくらいの眠気はいつものこと」と感じるようになるかもしれません。
けれども、眠気に慣れたように感じることと、脳の働きが元の状態に戻ることは同じではありません。
4時間・6時間・8時間の睡眠機会を比較した別の研究でも、4時間群と6時間群では、認知機能の低下が日ごとに蓄積しました。一方、本人が感じる眠気は、能力の低下ほど大きくは増えませんでした。
つまり、自分では「意外と平気」と思っていても、実際には注意力や判断力が落ちていることがあります。
生まれつき短時間の睡眠でも日中の調子を保てる「ショートスリーパー」も存在しますが、誰もが努力や習慣でなれるものではありません。
ショートスリーパーについては、以前のコラムで詳しく紹介しています。
4.3時間では、睡眠のどの部分が削られる?

睡眠は、朝まで同じ深さで続いているわけではありません。
眠りにつくと、浅いノンレム睡眠から深いノンレム睡眠へ進み、その後、レム睡眠が現れます。この周期を一晩に何度か繰り返しています。
深いノンレム睡眠は、一般に睡眠の前半に多く現れます。一方、レム睡眠は睡眠の後半になるほど長くなる傾向があります。
そのため、睡眠を3時間で切り上げると、単に睡眠全体が短くなるだけでなく、後半に増えるレム睡眠を十分に取れない可能性があります。
別の研究では、健康な若い男性を対象に、ベッドに入る時間を1日4時間に制限しました。その結果、深いノンレム睡眠は比較的保たれた一方、レム睡眠は睡眠時間の短縮に伴って減少しました。
これを見て、「深い睡眠さえ取れれば、短時間でも問題ない」と考えるのは早計です。
深いノンレム睡眠とレム睡眠では、脳や体の状態が異なります。どちらか一方だけを取れば、必要な睡眠がすべて足りるとは考えられていません。
また、睡眠段階の現れ方には個人差があり、年齢、体調、それまでの睡眠不足、眠る時間帯などによっても変わります。
「3時間眠れば、深い睡眠を全部取れる」「3時間ではレム睡眠がなくなる」と一律には言えません。
それでも、睡眠を3時間で切り上げることは、一晩に何度か繰り返される睡眠のサイクルを、途中で終えることになります。
睡眠前半に多い深いノンレム睡眠だけでなく、後半に増えるレム睡眠まで含めて、十分な睡眠時間を確保することが大切です。
5.短い睡眠は、ホルモンや血糖、食欲にも関係する

睡眠不足の影響は、脳の集中力だけではありません。
睡眠中、体では血糖、食欲、ストレス反応、自律神経などに関わるさまざまな調整が行われています。
健康な若い男性11人を対象に、ベッドで過ごす時間を1日4時間に制限した研究では、6日後に、血糖を処理する働きの低下、夕方のコルチゾール濃度の上昇、交感神経活動の高まりなどが確認されました。
また、別の研究で健康な若い男性12人を対象に、1日4時間の睡眠機会を2日間続けたところ、満腹感に関係するレプチンが低下し、空腹感に関係するグレリンが増加しました。参加者が感じる空腹感や食欲も高まっていました。
寝不足の日に、甘いものや濃い味のものが欲しくなる。いつもより食欲を抑えにくい。
「また甘いものを食べてしまった」と自分を責めたくなる日もあります。でも、その食欲には、意志の弱さだけでなく、睡眠不足の影響も関係しているかもしれません。
ただし、いずれも4時間前後の睡眠制限を数日間受けた、少人数の若い男性を対象にした実験です。
年齢や性別を問わずすべての人に同じ変化が起こる、あるいは3時間睡眠で必ず同じことが起こると証明したものではありません。
それでも、睡眠不足が脳だけでなく、体の代謝やホルモンにも関わることは知っておきたい点です。
6.休日に長く眠れば、睡眠不足は取り戻せる?

平日は3〜4時間しか眠れないけれど、休日に長く寝ているから大丈夫。
そう考える人もいるかもしれません。
確かに、睡眠時間を長く取ることで、眠気や疲労感が軽くなることはあります。しかし、数日間長く眠れば、蓄積した影響がすべて元に戻るとは限りません。
3時間・5時間・7時間・9時間の睡眠機会を比較した実験では、7日間の睡眠制限後に3日間、1日8時間の回復睡眠が設けられました。
3時間群の反応速度や注意力は、最初の回復睡眠後に大きく改善しました。しかし、3日間で完全に元の状態へ戻ったわけではありませんでした。
回復までに必要な期間は、睡眠不足の程度や続いた期間、年齢、体調などによって変わります。
そのため、「一晩長く眠れば大丈夫」「週末に寝だめすれば帳消しになる」とは言い切れません。
また、休日だけ起床時刻が大きく遅くなると、体内時計がずれ、週明けに再び起きづらくなることもあります。
休日の睡眠を回復の助けにしながらも、できるだけ平日の睡眠時間そのものを確保することが大切です。
7.3時間睡眠が続いているときに見直したいこと

3時間睡眠が続いているときは、まず「眠る時間がない」のか、「眠る時間はあるのに眠れない」のかを分けて考えてみましょう。
眠る時間がない場合
仕事、家事、介護、育児、スマートフォンなどで就寝時刻が遅くなっている場合は、睡眠の質だけで不足分を補うことはできません。
睡眠が大切だと分かっていても、仕事や家族のことを考えると、簡単には時間を増やせない。そんな方も多いと思います。
それでも、睡眠を削る生活をそのままにせず、まずは今より30分でも睡眠時間を増やせないかを考えてみましょう。
- ・寝る前にしていることを翌日に回す
- ・スマートフォンを見る時間を決める
- ・家事を一部減らす、家族と分担する
- ・夕方以降のカフェインを見直す
- ・休日だけでなく、平日の就寝時刻を少し早める
わずか30分でも、毎日続けば1週間で3時間30分。決して小さな差ではありません。
もちろん、3時間30分眠れば十分になるという意味ではありません。それでも、最初から完璧を目指すより、まず睡眠を削っている時間を少しずつ取り戻すことが第一歩になります。
睡眠の質を整える環境も見直す
睡眠の質を高める、睡眠の質を整えると聞くと、特別な快眠法を探したくなるかもしれません。
しかし、限られた睡眠時間だからこそ、暑さや蒸れ、衣類が肌に当たる不快感で、さらに眠りを妨げられることは避けたいものです。
寝室の温度や湿度を見直す。光や音を抑える。肌あたりがよく、熱や湿気がこもりにくいパジャマや寝具を選ぶ。
こうした工夫は、眠りを妨げる不快感を減らし、心地よい睡眠環境を整える助けになります。
パジャマを選ぶときは、天然素材や天然繊維、綿100%などの表示だけで判断するのではなく、織り方、厚さ、通気性、吸湿性、肌ざわりまで確認することも大切です。
「天然素材なら睡眠の質が上がる」「綿100%なら必ずよく眠れる」と一律には言えません。
それでも、自分が暑いのか、冷えるのか、汗をかきやすいのかなどに合わせて、心地よく着られるパジャマを選ぶことは、快眠を妨げる不快感を減らす方法のひとつです。
ただし、睡眠環境を整えるだけで、足りない睡眠時間そのものを補えるわけではありません。まずは、眠る時間を確保することが基本です。
眠る時間はあるのに眠れない場合
布団に入っても眠れない。夜中や早朝に目が覚め、その後眠れない。
こうした状態が続く場合は、生活習慣だけでなく、体や心の不調、睡眠障害などが隠れている可能性もあります。
いびきや無呼吸、脚の不快感、痛み、夜間頻尿、更年期のほてり、不安や気分の落ち込みなどが、睡眠を妨げることもあります。
睡眠環境を整えても3時間程度の睡眠が続き、日中の生活に影響が出ている場合は、我慢を続けず、医師などの専門家に相談してください。
また、強い眠気があるときは、車の運転や危険を伴う作業を避けることも大切です。
まとめ:短い睡眠に慣れても、睡眠不足がなくなるわけではない

1日3時間の睡眠が続いても、脳と体がその生活に完全に適応するとは限りません。
- ・反応速度が遅くなる
- ・注意が途切れやすくなる
- ・集中力や判断力が低下する
- ・睡眠後半に多いレム睡眠を十分に取れない可能性がある
- ・血糖、食欲、ストレス反応などに影響する可能性がある
- ・数日長く眠っても、すぐに完全回復するとは限らない
特に気をつけたいのは、自分では短時間睡眠に慣れたと思っていても、実際の能力低下には気づきにくいことです。
寝具やパジャマを見直すことは、眠っている時間を少しでも快適にする助けになります。
ただし、3時間しか眠れていない場合、それだけで足りない睡眠時間を補えるわけではありません。まず必要なのは、眠る時間そのものを少しでも確保することです。
そして、眠る時間はあるのに眠れない状態が続くなら、ひとりで抱え込まず、専門家に相談することです。
今夜、すべてを変える必要はありません。
いつもより30分早く布団に入る。寝る前のスマートフォンを少し早く置く。明日に回せることは、明日に回す。
眠る時間を守ることも、明日の自分をいたわる方法のひとつです。
よくある質問(3時間睡眠・睡眠不足・回復)
Q. 3時間睡眠でも、日中に眠くなければ問題ありませんか?
眠気を感じないことだけでは、睡眠が足りているとは判断できません。慢性的な睡眠不足では、本人が眠気に慣れたように感じても、注意力や反応速度の低下が続いていることがあります。仕事上のミス、物忘れ、休日の長時間睡眠などもあわせて確認しましょう。
Q. 深い睡眠を取れていれば、3時間でも大丈夫ですか?
深いノンレム睡眠は睡眠の前半に多く現れますが、睡眠には深いノンレム睡眠以外の段階もあります。睡眠後半にはレム睡眠が増えるため、3時間で起きる生活では、その後の睡眠を十分に取れない可能性があります。「深く眠れたから、短くても十分」とは限りません。
Q. 昼寝をすれば、3時間しか眠れなかった分を補えますか?
短い昼寝は、一時的な眠気や注意力の改善に役立つことがあります。ただし、夜に不足した睡眠の影響をすべて補えるわけではありません。昼寝だけに頼らず、夜の睡眠時間を確保することが基本です。夕方以降の長い昼寝は、夜の寝つきを妨げることもあります。
Q. 休日に長く寝れば回復できますか?
長く眠ることで、眠気や疲労感が軽くなることはあります。しかし、慢性的な睡眠不足による能力低下が、一晩や数日の長い睡眠ですべて元に戻るとは限りません。休日に極端な寝だめをするより、平日の睡眠時間を少しずつ増やすことが大切です。
Q. 睡眠の質を高めれば、3時間睡眠でも大丈夫ですか?
睡眠の質を整えることは大切ですが、睡眠時間の不足を完全に補うことはできません。寝室環境や寝具、パジャマを見直すことは、暑さ、蒸れ、肌への刺激など、眠りを妨げる不快感を減らす助けになります。そのうえで、まずは必要な睡眠時間を確保することが基本です。
Q. 3時間睡眠がどのくらい続いたら、医療機関へ相談すべきですか?
「何日続いたら受診する」という一律の基準はありません。眠る時間を確保しているのに3時間程度しか眠れない、日中の強い眠気や集中力低下がある、いびきや無呼吸を指摘された、気分の落ち込みが続くといった場合は、早めに医師へ相談してください。強い眠気があるときは、車の運転や危険な作業を避けましょう。
スリーププランナー:ローホ (認定登録番号:653030)
資格を活かして、皆さんと一緒に睡眠環境を整えることを目指すパートナー。
現在、更年期真っ只中。気持ちと身体の揺らぎを日々感じています。
だからこそ、睡眠の大切さや面白さをより深くお伝えしていきたい。
そんな想いで、睡眠を楽しんでもらえる商品をチームで開発し、少しでも皆さんに寄り添っていきたいと考えています。
- ・保有資格:スリーププランナー
- 【参考・出典】
- ・厚生労働省:健康づくりのための睡眠ガイド2023
- ・厚生労働省:Good Sleepガイド
- ・Belenky G, et al. Patterns of performance degradation and restoration during sleep restriction and subsequent recovery: a sleep dose-response study. Journal of Sleep Research. 2003.
- ・Van Dongen HPA, et al. The cumulative cost of additional wakefulness: dose-response effects on neurobehavioral functions and sleep physiology from chronic sleep restriction and total sleep deprivation. Sleep. 2003.
- ・Spiegel K, et al. Impact of sleep debt on metabolic and endocrine function. The Lancet. 1999.
- ・Spiegel K, et al. Sleep curtailment in healthy young men is associated with decreased leptin levels, elevated ghrelin levels, and increased hunger and appetite. Annals of Internal Medicine. 2004.
- ・National Heart, Lung, and Blood Institute:Sleep Phases and Stages
※本コラムは公的機関の情報および睡眠に関する研究、スリーププランナーの知識に基づいて作成したものであり、医療行為や診断ではありません。気になる症状がある場合は医師にご相談ください。
~日本を睡眠大国へ~
自然を選び、自分をてらす。
睡眠を選び、地球をてらす。
身体も心も軽やかに、一瞬一瞬をキラキラと輝く、明日をもっと楽しもうと思える。
眠ることは、自分らしく生きること。
睡眠が変わると、明日が変わる。
明日をてらす 睡眠てらす
